まだまだ暑い日が続きますが、秋のお彼岸の時期がやってまいりました。
毎年お伝えしていますが「彼岸」とは本来、時期や期間を示すのではなく、場所を示す言葉です。
この世を此岸といい、極楽浄土を彼岸といいます。
なぜ日本では、 春分の日、秋分の日を中日として前後三日の合計一週間を「お彼岸」と呼ぶのか。
それは、日本では両日とも昼と夜の長さが同じになり(お釈迦さまの教えの「中道」を示す)、夕日が真西(極楽浄土のある方向)に沈むことから、 極楽(彼岸)に思いをはせ、修行を行いやすいとされていることからです。
古くは1200年ほど前から行われ、 日本独自の仏教行事として確立してきました。
では、「お彼岸」の期間はどのように過ごすとよいのか。
彼岸に至る六つの修行「六波羅蜜」を行うのが正しい過ごしかたであると説かれます。
布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧を総称して六波羅蜜といいますが、 この六つの修行を順番に行ってまいります。
布施とは施しの行い。
自分だけ得るのではなく、 分け与えることで他の幸せを望み、 他の苦しみを除きます。自分さえよければいいという心から離れることです。
次に、持戒。戒を持(たも)つと書きますが、 お釈迦さまの教えの元に正しく日々を送ることが説かれます。
悪因悪果とならぬよう注意して善を修することが大切です。
人に優しく、自分に厳しく、悪いことをしないように努力し 、善いことをするように努力します。
次に忍辱。
自己と向き合い怒りや怨みから離れて心を制御することにあります。
一時の感情にとらわれず、一旦耐え忍ぶということです。
次に精進。「怠ける」の対義で、 つとめ励むことを示します。
自分の役割は何なのかを見つめなおすところから始めてみるのもいいでしょう。
次に禅定。
波立つこころを鎮めて落ち着かせ、 正しい智慧を得るために精神を集中することです。
心の浮き沈みを安定させることで、 感情的にならず、相手を見ることができるでしょう。
最後には智慧。
智慧とは仏さまの説く正しい教えでありこの世の真理を示します。
自分の愚かさ、至らなさを見つめ、 極楽浄土にのみ救われる道があると信じ、念仏を称える心を養います。
そうして六つの徳目を実践する中で、 お中日にはご先祖様など先立たれた皆様がいる極楽を思い、 極楽との縁を紡ぎ、沈む夕日に向かって何度も最上善功徳行、 お念仏をお称えするのです。
これが「お彼岸」の過ごし方です。
どうか一つ一つ、一日ずつで構いません。
しっかりと考えてみてください。
お彼岸にこそ見えてくるものがあることでしょう。
南無阿弥陀仏