そうだね、 まずは仏像が作られるようになった成り立ちから説明しよう。
仏像が初めて作られたのは、紀元前一世紀の終わりごろから二世紀の初めころ、 西北インドのガンダーラ地方・マトゥーラ地方といわれているよ。
お釈迦さまが亡くなったのが、 紀元前四八六年ともされているから、 それから五百年以上も仏像は作られなかったんだ。
仏像がつくられるまでの古代インドでは、 限りなく神聖ではかり知れない徳を持った仏さまを現実的な像として表すことは許されないことだと考えられていたんだ。
偶像的に崇拝することは教えを正しく伝える障害として考えられていたともされる。
仏像ばかりでなく、仏さまの聖なる言葉(教え)も、 文字として残されることなく、口伝で広まっているのも同様の理由だね。
しかし、仏像が作られる以前に仏さまに関わる彫刻がなかったわけではないんだよ。 紀元前二世紀ごろから作られた「仏伝図」には、 お釈迦さまがその木の下で悟りを開いた「菩提樹」、 教えが世界に広まる様子を示す「宝輪」、 仏さまの足跡である「仏足石」などが象徴的に刻まれている。
仏さまを初めて人物像として表したガンダーラ地方は、 ギリシャなどとの交流が盛んだったんだ。
このときヘレニズム文化の影響を受けたガンダーラ土着の造形文化が、 仏像を造りだしたといわているね。
姿として表されると信仰の対象としてお祈りしやすいこともあり、 その後、西北インドの仏像文化は、急速に東インドへ向けて広まっていくんだ。
仏像の出現で仏教はより民衆的な宗教へと変化し、 その信徒を増やしていったんだね。
我々、機根の劣ったものには本当にありがたいものだね。