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執筆者の写真副住職

9月のネット法話「おたがいさま」

更新日:2021年9月21日



今年もお祭りの無い夏は過ぎ、 季節は秋へと移り変わっていきます。


日本の文化的な行事というのは人が集まることで活気が出るものばかりですから、 盆踊りもお祭りもお神輿も、楽しみはまだまだお預けです。


仕事もリモートワークなる自宅勤務が可能になった会社もあり、 遠距離通勤からの解放は果たされたものの引きこもりは進みます。


行事も出勤も無く、時間を過分に共有し、 プライベートディスタンスが侵害されることで関係性が悪化する家庭もあるようです。


人はちょうどのいい距離を保つことで、 いい関係を長続きさせることができるといいます。


日常を共にする家族にとってそのバランスが崩れた時の影響は大きいことでしょう。


人は親しくなればなるほど、 本音で会話ができるようになります。


しかしそれも行き過ぎると、 礼節を怠ってしまいもめごととなります。


尊敬の念を忘れ、 相手が望まぬことを言ったり行ったりしてしまうようになります。


さらには自分の優位性や正当性を主張したがるようになります。


それで愉しい毎日を過ごすことが叶うのでしょうか。


人は人として生まれ豊かに愉しく生きることを目指しているはずです。


自分だけ豊かになれるということはありません。


豊かになるにはまず自分の周りが豊かでなければなりません。


そのためには自分から慈悲の心をもち、 お互い様であることを忘れないことが大切です。


そこで思い出すのは、法然上人が言うところの「凡夫観」です。


凡夫とは智慧の眼なく、正しく物事を判断できない「至らない存在」です。


どんなに正しくあろうとも、それは主観のもので、 仏さまの目から見れば、例外なく日々の中に罪を犯し続ける我々であります。


自らが至らない存在であると理解することで、 人に優しく、お互いさまの心を取り戻すことができるようになります。 


日々のお念仏も豊かに生きるコツのひとつです。


この命有限であることの自覚無ければ声に念佛は出てまいりません。


有限と自覚して初めて、今生で豊かな生き方を目指すことができるものです。


南無阿弥陀仏

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